如月さんの詩は抒情詩ではないので、これが「詩?」と思うかもしれない。
これはいわば存在論詩、とか社会思想詩のようなものだ。
しかし、そこに、情感がないかというとそんななことはない。
絶望的なまでに激しい感情が渦巻いている。
だが、それが、直接的にはこちらに迫ってこない(ように書かれている)。
その理由の一つは、彼女のセンサーが我々の表層意識を通り越して、深層の無意識に届いているからだろう。
我々の無意識は、意識以上に構造化されているといったのは精神分析家のラカンだ。
それともう一つ、彼女の意識が常に世界と対峙しているからだ。世界と対峙している個を暴くとき、心理はしみったれた(金子光晴の嫌った)叙情を離れ、普遍の情感に触れる。
それは、いわば、愛する地球を、外側から、眺めるような視点だ。